コラム

女性のがん検診を職場で受けやすくする工夫
受診率アップの進め方を女性産業医が解説

公開日: 2026年9月10日 | 執筆: 産業医 武藤信子

乳がんと子宮頸がんは、早く見つければ治せる可能性が高いがんです。それにもかかわらず、日本の女性のがん検診受診率は諸外国に比べて低いのが現状です。理由のひとつが、これらの検診が会社の定期健康診断に含まれていないこと。つまり、意識して受けにいかないと、ずっとノーチェックのままになってしまうのです。

外科医としてがん治療に携わってきた立場から言うと、「もっと早く見つかっていれば」というケースは決して少なくありません。だからこそ、職場の後押しが受診率を大きく変えます。この記事では、企業ができる工夫をお伝えします。

まず結論

この記事のポイント

まず知っておきたい:対象年齢と頻度

国が推奨する女性のがん検診は次のとおりです。会社の健診とは別に受ける必要があります。

検診対象頻度主な検査
子宮頸がん検診20歳以上の女性2年に1回問診・視診・子宮頸部の細胞診 など
乳がん検診40歳以上の女性2年に1回問診・マンモグラフィ

※ 自治体の住民検診や、加入している健康保険の補助を活用できる場合があります。詳しくはお住まいの市区町村や保険者にご確認ください。

なぜ受診率が上がらないのか

「大切なのは分かっているけれど、受けていない」という方はとても多いです。理由を整理すると、だいたい次の3つに集約されます。

① 時間がない。平日の日中に医療機関へ行く時間が取れない。仕事や家庭が忙しく後回しになる。
② 情報がない。どこで・いくらで・どう予約すればいいか分からない。自分が対象年齢だと気づいていない。
③ 気後れ・不安。婦人科受診にためらいがある。「もし見つかったら怖い」という気持ちがある。

裏を返せば、職場がこの3つの壁を下げれば、受診率は確実に上がります。

企業ができる3つの工夫

① 費用のハードルを下げる(補助)

検診費用の全額または一部を会社が補助する、あるいは福利厚生サービスの検診メニューを案内するだけでも、「お金がかかるから」という理由はなくなります。加入している健康保険組合や協会けんぽの補助制度を社内に周知するのも効果的です。

② 時間のハードルを下げる(勤務配慮)

「検診で半休を取っても、勤務扱い・有給扱いにする」といった配慮があると、受診はぐっとしやすくなります。受診を勤務時間内に認めるだけで、「平日に時間が取れない」という最大の壁が下がります。

③ 情報と安心を届ける(啓発)

対象年齢の従業員に「あなたは今年の対象です」と個別に案内する、受診方法や予約先をまとめて配る、産業医や保健師による健康セミナーを開く——こうした啓発が「気づき」と「安心」を生みます。同性の医療職から説明を受けられると、婦人科への気後れも和らぎます。

受診率アップは「健康経営」の武器になる

女性のがん検診受診率の向上は、単なる福利厚生にとどまりません。従業員が健康で長く働けることは会社の力になりますし、こうした取り組みは健康経営優良法人などの認定でも評価される項目です。「女性が働きやすい会社」という採用面のアピールにもつながります。取り組みが数字(受診率)で見えるのも、続けやすいポイントです。

まとめ

乳がん・子宮頸がん検診は、会社の健診に含まれないぶん、職場の後押しが受診率を左右します。カギは「費用」「時間」「情報・安心」の3つの壁を下げること。補助・勤務配慮・啓発をセットで進めると効果的です。早期発見できるがんを見逃さないために、ぜひ職場から一歩を踏み出してください。

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この記事の執筆者: 武藤 信子(産業医)
日本医師会認定産業医。外科学会専門医・乳癌学会専門医・がん治療認定医・抗加齢学会専門医。外科医としてがん治療に携わった経験をもとに、健診フォロー・がん検診の受診勧奨・治療と仕事の両立支援に力を入れている。プロフィールの詳細はこちら