健康診断の結果の見方
「要再検査」を放置してはいけない理由を産業医が解説
健康診断の結果が届いたとき、じっくり読んでいますか? 「なんとなく眺めて、引き出しにしまって終わり」という方がとても多いのですが、結果表にはあなたの体からの大切なサインが詰まっています。
この記事では、産業医として多くの健診結果を見てきた立場から、結果表のどこを見ればいいか、どの判定なら動くべきかを、できるだけやさしくお伝えします。
まず見るのは「総合判定」
結果表の最初のページには、たいてい「総合判定」という欄があります。書き方は健診機関によって少しずつ違いますが、おおよそ次のような段階に分かれています。
| 判定の例 | 意味 | どうすればいい? |
|---|---|---|
| 異常なし(A) | 今回の検査では問題が見つからなかった | 今の生活を続けてOK。来年もきちんと受診を |
| 軽度異常・心配なし(B) | わずかに基準を外れているが、心配のない範囲 | 特別な対応は不要。数値は覚えておくと安心 |
| 要経過観察・生活改善(C) | 今すぐ病院に行く必要はないが、放置すると悪化しうる | 食事・運動・睡眠を見直し、次回の健診で変化を確認 |
| 要再検査 | もう一度測って、本当に異常かどうか確かめたい | 数週間〜数か月以内に再検査を |
| 要精密検査 | 異常の原因をくわしく調べる必要がある | できるだけ早く医療機関へ |
| 要治療 | 治療が必要な状態が見つかった | すみやかに受診を |
※ 記号や言葉は健診機関ごとに異なります。お手元の結果表の「判定の説明」欄もあわせてご確認ください。
「要再検査」と「要精密検査」はどう違う?
要再検査は「たまたまの数値かもしれないから、もう一度確認しましょう」という意味です。前日の食事や寝不足、測定時の緊張などで数値が振れることは珍しくありません。ただし、再検査をして初めて「たまたま」だったと確認できるのであって、再検査を受けない限り、異常が消えたことにはなりません。
要精密検査は一段階重く、「異常があることを前提に、原因を調べましょう」という意味です。たとえば便潜血が陽性なら大腸内視鏡、胸部レントゲンの影ならCT、というように、より詳しい検査が必要です。
大切なのは、要精密検査=重い病気、ではないことです。精密検査を受けた結果「問題なし」となる方もたくさんいます。怖いから行かない、が一番危険です。特にがんは、症状が出る前に見つけられるかどうかで、その後が大きく変わります。
放置されやすい代表的なサイン
血圧
健診でもっとも多い所見のひとつです。高血圧は自覚症状がほとんどないまま、血管を静かに傷つけていきます。診察室での血圧が140/90mmHg以上が続くようなら、一度受診を。家庭用血圧計で朝晩測って記録を持っていくと、診察がスムーズです。
血糖・HbA1c
HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)は、過去1〜2か月の血糖の平均を映す数値です。ここが高めと言われたら、糖尿病への入り口に立っているサイン。早い段階なら、食事と運動の見直しだけで十分に引き返せます。
コレステロール・中性脂肪
LDL(悪玉)コレステロールの高さも自覚症状がありません。放置すると動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めます。特に女性は更年期以降、女性ホルモンの変化でコレステロールが急に上がることがよくあります。「去年まで正常だったのに」という方は、まさにこのパターンかもしれません。
貧血(ヘモグロビン低値)
働く女性に非常に多い所見です。「昔からだから」と流されがちですが、月経のある女性の貧血の背景に、子宮筋腫などの婦人科疾患が隠れていることがあります。また、まれに消化管からの出血が原因のことも。「いつものこと」と自己判断せず、一度は原因を調べてほしい項目です。
尿検査(尿蛋白・尿潜血)
腎臓は「沈黙の臓器」で、悪くなっても症状がなかなか出ません。尿蛋白の陽性が続く場合は、腎臓の機能が落ち始めているサインのことがあります。軽く見られがちですが、再検査の案内が出たら受けてください。
肝機能(AST・ALT・γ-GTP)
お酒のイメージが強い項目ですが、お酒を飲まない方でも脂肪肝などで数値が上がります。生活習慣の見直しで改善できることが多い項目なので、早めに気づけたらむしろチャンスです。
女性に知ってほしい、もうひとつのこと
会社の定期健康診断には、乳がん検診・子宮頸がん検診は含まれていません(法律で決められた検査項目に入っていないためです)。「毎年健診を受けているから大丈夫」と思っていても、女性特有のがんはノーチェックのまま、ということが起こりえます。
子宮頸がん検診は20歳から2年に1回、乳がん検診(マンモグラフィ)は40歳から2年に1回が国の推奨です。お住まいの自治体の補助や、会社の福利厚生を活用して、定期健診とは別に受けてください。
人事・経営者の方へ:「配って終わり」にしない
従業員の健診結果について、会社には「結果を本人に通知して終わり」ではなく、所見のあった従業員について医師の意見を聴き、必要に応じて働き方に配慮する義務があります(労働安全衛生法66条の4)。これは従業員50名未満の会社も対象です。
とはいえ、「要精密検査の人が実際に受診したかまでは把握できていない」という会社がほとんどです。受診勧奨の声かけまで含めたフォロー体制をつくることが、従業員の健康と会社のリスク管理の両方を守ります。詳しくは「50名未満でも産業医は必要?」の記事もご覧ください。
まとめ
- 総合判定を確認。「要再検査」以上は必ず動く
- 「要精密検査」は怖がらず、できるだけ早く受診する
- 血圧・血糖・コレステロール・貧血は、症状がなくても軽視しない
- 乳がん・子宮頸がん検診は会社の健診に含まれない。別途受ける
- 会社の担当者は「配って終わり」にせず、フォロー体制を
健診は「受けること」ではなく「結果を次の行動につなげること」に意味があります。結果表を見てわからないことがあれば、健診機関や かかりつけ医、職場の産業医に遠慮なく聞いてください。
健診後のフォロー体制づくりをお手伝いします
Nexus Health & Wellness では、健診結果の読み解きから受診勧奨、就業上の配慮まで、
企業の健診フォローを一貫して支援しています。50名未満の企業様もご相談いただけます。