コラム

健康診断の結果の見方
「要再検査」を放置してはいけない理由を産業医が解説

公開日: 2026年7月6日 | 執筆: 産業医 武藤信子

健康診断の結果が届いたとき、じっくり読んでいますか? 「なんとなく眺めて、引き出しにしまって終わり」という方がとても多いのですが、結果表にはあなたの体からの大切なサインが詰まっています。

この記事では、産業医として多くの健診結果を見てきた立場から、結果表のどこを見ればいいか、どの判定なら動くべきかを、できるだけやさしくお伝えします。

まず見るのは「総合判定」

結果表の最初のページには、たいてい「総合判定」という欄があります。書き方は健診機関によって少しずつ違いますが、おおよそ次のような段階に分かれています。

判定の例意味どうすればいい?
異常なし(A)今回の検査では問題が見つからなかった今の生活を続けてOK。来年もきちんと受診を
軽度異常・心配なし(B)わずかに基準を外れているが、心配のない範囲特別な対応は不要。数値は覚えておくと安心
要経過観察・生活改善(C)今すぐ病院に行く必要はないが、放置すると悪化しうる食事・運動・睡眠を見直し、次回の健診で変化を確認
要再検査もう一度測って、本当に異常かどうか確かめたい数週間〜数か月以内に再検査を
要精密検査異常の原因をくわしく調べる必要があるできるだけ早く医療機関へ
要治療治療が必要な状態が見つかったすみやかに受診を

※ 記号や言葉は健診機関ごとに異なります。お手元の結果表の「判定の説明」欄もあわせてご確認ください。

「要再検査」と「要精密検査」はどう違う?

要再検査は「たまたまの数値かもしれないから、もう一度確認しましょう」という意味です。前日の食事や寝不足、測定時の緊張などで数値が振れることは珍しくありません。ただし、再検査をして初めて「たまたま」だったと確認できるのであって、再検査を受けない限り、異常が消えたことにはなりません

要精密検査は一段階重く、「異常があることを前提に、原因を調べましょう」という意味です。たとえば便潜血が陽性なら大腸内視鏡、胸部レントゲンの影ならCT、というように、より詳しい検査が必要です。

大切なのは、要精密検査=重い病気、ではないことです。精密検査を受けた結果「問題なし」となる方もたくさんいます。怖いから行かない、が一番危険です。特にがんは、症状が出る前に見つけられるかどうかで、その後が大きく変わります。

放置されやすい代表的なサイン

血圧

健診でもっとも多い所見のひとつです。高血圧は自覚症状がほとんどないまま、血管を静かに傷つけていきます。診察室での血圧が140/90mmHg以上が続くようなら、一度受診を。家庭用血圧計で朝晩測って記録を持っていくと、診察がスムーズです。

血糖・HbA1c

HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)は、過去1〜2か月の血糖の平均を映す数値です。ここが高めと言われたら、糖尿病への入り口に立っているサイン。早い段階なら、食事と運動の見直しだけで十分に引き返せます。

コレステロール・中性脂肪

LDL(悪玉)コレステロールの高さも自覚症状がありません。放置すると動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めます。特に女性は更年期以降、女性ホルモンの変化でコレステロールが急に上がることがよくあります。「去年まで正常だったのに」という方は、まさにこのパターンかもしれません。

貧血(ヘモグロビン低値)

働く女性に非常に多い所見です。「昔からだから」と流されがちですが、月経のある女性の貧血の背景に、子宮筋腫などの婦人科疾患が隠れていることがあります。また、まれに消化管からの出血が原因のことも。「いつものこと」と自己判断せず、一度は原因を調べてほしい項目です。

尿検査(尿蛋白・尿潜血)

腎臓は「沈黙の臓器」で、悪くなっても症状がなかなか出ません。尿蛋白の陽性が続く場合は、腎臓の機能が落ち始めているサインのことがあります。軽く見られがちですが、再検査の案内が出たら受けてください。

肝機能(AST・ALT・γ-GTP)

お酒のイメージが強い項目ですが、お酒を飲まない方でも脂肪肝などで数値が上がります。生活習慣の見直しで改善できることが多い項目なので、早めに気づけたらむしろチャンスです。

女性に知ってほしい、もうひとつのこと

会社の定期健康診断には、乳がん検診・子宮頸がん検診は含まれていません(法律で決められた検査項目に入っていないためです)。「毎年健診を受けているから大丈夫」と思っていても、女性特有のがんはノーチェックのまま、ということが起こりえます。

子宮頸がん検診は20歳から2年に1回、乳がん検診(マンモグラフィ)は40歳から2年に1回が国の推奨です。お住まいの自治体の補助や、会社の福利厚生を活用して、定期健診とは別に受けてください。

人事・経営者の方へ:「配って終わり」にしない

従業員の健診結果について、会社には「結果を本人に通知して終わり」ではなく、所見のあった従業員について医師の意見を聴き、必要に応じて働き方に配慮する義務があります(労働安全衛生法66条の4)。これは従業員50名未満の会社も対象です。

とはいえ、「要精密検査の人が実際に受診したかまでは把握できていない」という会社がほとんどです。受診勧奨の声かけまで含めたフォロー体制をつくることが、従業員の健康と会社のリスク管理の両方を守ります。詳しくは「50名未満でも産業医は必要?」の記事もご覧ください。

まとめ

健診結果が届いたらチェック

健診は「受けること」ではなく「結果を次の行動につなげること」に意味があります。結果表を見てわからないことがあれば、健診機関や かかりつけ医、職場の産業医に遠慮なく聞いてください。

健診後のフォロー体制づくりをお手伝いします

Nexus Health & Wellness では、健診結果の読み解きから受診勧奨、就業上の配慮まで、
企業の健診フォローを一貫して支援しています。50名未満の企業様もご相談いただけます。

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この記事の執筆者: 武藤 信子(産業医)
日本医師会認定産業医。外科学会専門医・乳癌学会専門医・がん治療認定医・抗加齢学会専門医。外科医としてがん治療に携わった経験をもとに、健診フォロー・がん検診の受診勧奨・治療と仕事の両立支援に力を入れている。プロフィールの詳細はこちら