コラム

50名未満でも産業医は必要?
中小企業がやるべき健康管理を女性産業医が解説

公開日: 2026年7月5日 | 執筆: 産業医 武藤信子

「うちは従業員が50名もいないから、産業医は関係ない」——中小企業の経営者や人事の方から、よくこう言われます。たしかに、従業員50名未満の事業場には、産業医を選任する法律上の義務はありません

ただ、それは「健康管理をしなくていい」という意味ではありません。実は、会社の規模に関係なく必要なことがいくつかありますし、2028年からは新しい義務も始まります。この記事で整理してお伝えします。

まず結論

この記事のポイント

会社の規模で何が変わるのか

労働安全衛生法という法律では、事業場(会社の拠点ごと)の従業員数によって、やるべきことが変わります。ざっくり整理すると次のとおりです。

50名以上の事業場50名未満の事業場
産業医の選任義務(14日以内に選任し、労働基準監督署へ届出)義務なし。ただし医師等による健康管理の努力義務あり
健康診断の実施義務義務(規模に関係なし)
健診の有所見者への医師の意見聴取義務義務(規模に関係なし)
長時間労働者への医師の面接指導義務義務(規模に関係なし)
ストレスチェック義務現在は努力義務 → 2028年4月から義務化

※ 従業員数は会社全体ではなく「事業場ごと」に数えます。パート・アルバイトの方も、常時働いていれば人数に含めるのが基本です。

意外と知られていない「規模に関係ない義務」

① 健康診断は必ず実施する

年1回の定期健康診断は、従業員が1人でもいれば会社の義務です。ここまでは多くの会社ができています。

② 「異常あり」の結果を放置しない

あまり知られていないのがこちらです。健診で「要再検査」「要精密検査」などの所見があった従業員について、その人の働き方をどうするべきか、医師の意見を聴くことが法律で義務とされています(労働安全衛生法66条の4)。これは50名未満の会社も対象です。

健診結果が「配りっぱなし」になっていて、この意見聴取が行われていない会社は、実は少なくありません。万一、放置された病気が悪化した場合、会社の安全配慮義務が問われるおそれもあります。

③ 長時間労働者への面接指導

残業が月80時間を超えて疲労がたまっている従業員から申出があれば、医師による面接指導を行うことも、規模に関係なく義務です。

2028年4月から、ストレスチェックが50名未満にも義務に

これまでストレスチェック(年1回の心の健康チェック)は50名以上の事業場だけの義務でしたが、法律の改正により、2028年4月1日から50名未満の事業場にも義務化されることが決まっています(初回は2029年3月末までに実施)。

「まだ先の話」に見えますが、実施には医師などの「実施者」が必要で、結果の取り扱いにも専門的な配慮が求められます。小規模な会社ほど、早めに相談先を確保しておくと安心です。

50名未満の会社の選択肢

地域産業保健センターを利用する(無料)

国の事業として、50名未満の事業場向けに医師の意見聴取や面接指導を無料で提供している「地域産業保健センター」があります。費用をかけられない場合、まずはこちらを利用するのがよいでしょう。ただし利用回数に限りがあり、毎回同じ医師に相談できるとは限りません。

顧問医と契約する

継続的に同じ医師に関わってもらいたい場合は、産業医経験のある医師と顧問契約を結ぶ方法があります。健診後の意見聴取だけをスポットで頼む、月1回の訪問で健康相談も受けてもらう、など会社の実情に合わせた形が可能です。従業員が増えて50名を超えたときに、そのまま正式な産業医として選任できるのも利点です。

こんな状態なら、一度ご相談ください

ひとつでも当てはまったら相談のタイミングです

50名未満の企業様のご相談を歓迎しています

Nexus Health & Wellness では、50名未満の企業様の顧問医契約を承っています。
「まだ検討中」の段階でも、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせフォームへ
あわせて読みたい
健康診断の結果の見方|「要再検査」を放置してはいけない理由を産業医が解説 産業医の変更・引き継ぎの進め方|手順と失敗しない選び方を産業医が解説
この記事の執筆者: 武藤 信子(産業医)
日本医師会認定産業医。外科学会専門医・乳癌学会専門医・がん治療認定医・抗加齢学会専門医。外科医としてがん治療に携わった経験をもとに、健診フォロー・がん検診の受診勧奨・治療と仕事の両立支援に力を入れている。プロフィールの詳細はこちら