コラム

産業医の変更・引き継ぎの進め方
手順と失敗しない選び方を産業医が解説

公開日: 2026年7月13日 | 執筆: 産業医 武藤信子

「訪問はしてくれるけれど、形だけになっている」「従業員が面談を嫌がる」「メンタル不調の相談に乗ってもらえない」——今の産業医に対するこうしたお悩みは、実は珍しいものではありません。

結論から言うと、産業医は変更できます。お付き合いのある医師を変えるのは気が引けるものですが、産業医は従業員の健康を守るための存在。機能していないなら、見直すことは会社として真っ当な判断です。この記事では、変更の手順と引き継ぎのポイントを整理します。

まず結論

この記事のポイント

産業医を変更したくなる、よくある理由

私が企業のご担当者から伺う理由は、だいたい次のどれかです。

①訪問が短時間で形式的、②従業員が「相談しにくい」と感じている、③メンタルヘルスや女性の健康など、今の会社の課題と医師の得意分野が合っていない、④高齢などの理由で先生の側が業務を縮小したい、⑤会社の成長に対応しきれていない。

どれも「先生が悪い」というより、会社のフェーズと産業医の持ち味が合わなくなった、というケースがほとんどです。だからこそ、感情的にならず、事務的な手順として淡々と進めて大丈夫です。

変更の手順(4ステップ)

ステップ1: 現在の契約内容を確認する

産業医との契約書(嘱託契約書・業務委託契約書など)を出して、解約の予告期間(「解約は◯か月前までに通知」など)と契約期間を確認します。紹介会社経由の契約なら、紹介会社側の規約も確認してください。

ステップ2: 次の産業医を先に探す

大切なのは、解約より先に次を決めることです。従業員50名以上の事業場では産業医の選任は法律上の義務なので、空白期間を作らないのが原則です。探し方は主に3つあります。

探し方特徴
紹介会社を利用候補を複数比較できる。紹介料・月額費用は高めになることも
地元の医師会に相談地域の産業医を紹介してもらえる。費用は比較的抑えめ
産業医に直接依頼ホームページなどで直接探す。人柄や方針を事前に確認しやすく、中間コストがない

ステップ3: 引き継ぎを行う

新旧の産業医が直接会うことは実際には少なく、会社が資料を整理して新しい産業医に渡す形が一般的です。用意しておくとスムーズなもの:

引き継ぎで渡すもの

特に休職中・復職支援中の従業員がいる場合は、支援が途切れると本人への影響が大きいため、状況を必ず文書で申し送りしてください。

ステップ4: 労働基準監督署へ届け出る

従業員50名以上の事業場では、産業医を選任したとき(変更したときも同様)に、「産業医選任報告」を所轄の労働基準監督署に提出します。新しい産業医の医師免許証の写しなどが必要です。様式は厚生労働省のサイトから入手でき、電子申請も可能です。

次の産業医選びで失敗しないポイント

変更まで踏み切ったのに「前と同じだった」となっては残念です。次の3点を面談時に確認することをおすすめします。

① 会社の課題と得意分野が合っているか

メンタルヘルス対応を強化したいのか、健診後のフォローを充実させたいのか、女性従業員の健康課題に取り組みたいのか。会社側の「お願いしたいこと」を先に言語化して、それが得意な医師を選びましょう。

② 訪問頻度・対応方法が実態に合うか

毎月の訪問に加えて、緊急時の相談方法(メール・電話・オンライン)をどうするか。拠点が複数ある会社やテレワーク中心の会社なら、オンライン面談への対応も確認ポイントです。

③ 従業員が話しやすい相手か

産業医の仕事の中心は「人の話を聴くこと」です。契約前の面談で、高圧的でないか、説明がわかりやすいかを見てください。女性従業員が多い職場では、女性産業医だと相談のハードルが下がるという声を多くいただきます。

まとめ

産業医の変更は、①契約確認 → ②次を先に確保 → ③資料で引き継ぎ → ④労基署へ届出、の4ステップです。特別に難しい手続きはありませんが、「空白期間を作らない」「フォロー中の従業員の申し送りを丁寧に」の2点だけは押さえてください。

産業医の変更・引き継ぎのご相談を承ります

Nexus Health & Wellness では、産業医の変更に伴う引き継ぎから丁寧に対応します。
「今の産業医との関係を続けるべきか迷っている」という段階のご相談も歓迎です。

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この記事の執筆者: 武藤 信子(産業医)
日本医師会認定産業医。外科学会専門医・乳癌学会専門医・がん治療認定医・抗加齢学会専門医。外科医としてがん治療に携わった経験をもとに、健診フォロー・がん検診の受診勧奨・治療と仕事の両立支援に力を入れている。プロフィールの詳細はこちら